黒板に向かい、机と椅子が整然と並ぶ風景──。「学校の教室」と聞けば、多くの人が同じ光景を想起するのはなぜでしょうか。
この均質さの背景には、産業革命をきっかけに拡大した資本主義があります。工場労働に求められた時間厳守や反復作業への耐性は、教師の指示に従うことやチャイムによる時間割、整列などの仕組みとして学校に持ち込まれました。規律と効率を重んじる「機能」の論理が、現代の教室をかたちづくってきたのです。
けれども均質さは、単に個性を抑圧するだけの装置ではありません。すべての子どもに等しく席を与えるその風景は、むしろ個性を生きるための平等な土台とも捉えられます。「均質」と「個性」は対立しながらも、互いを支え合う関係にあるのです。
本作品は、役割を終えた学校の机と椅子を「.Garbon」による新たなパーツで再構築し、機能の象徴を個性へと蘇生させる試みです。長い時間、数えきれない個を受け止めてきたモノが、自らの意志を得て語りはじめたとしたら──。均質という殻を破り、潜んでいた「本能」や「個性」を露わにするとき、わたしたちは「与えられるモノ」から「自らかたちづくるモノ」へと変化していくのではないでしょうか。