ノーベル賞受賞のフランスの物理学者ピエール=ジル・ド・ジェンヌは、印象派芸術の特徴を取り入れた「印象派物理学」を提唱しました。この概念は、事象の奥にある本質を示すためには全体に漂う印象をつかむことが重要であるとし、数学的詳細を大胆にそぎ落とすことで物理的本質を浮き立たせようとするものです。
《SPACETIME-時空》は、最新の宇宙理論を柔軟に組み合わせ、印象派物理学的なアプローチで物質的にこの宇宙を表現したモビールです。また、伝統工芸の切り紙を研究して生まれた、まだ数式化できていない未知の幾何学模型でもあります。内包空間には宇宙を想起させるグラフィックが配され、気流により静かに回転するキネティック・アートである本モビールは、独特のゆらぎ効果によるやすらぎの時間を、あるいは壮大な宇宙を探求する時間を、鑑賞者に多様に楽しんでもらえるように制作されました。本展では、重力を利用してダイナミックに変形させたモビールを複数展示し、宇宙の連綿性を表現します。
もう一つの展示作品《コズミック・ドリッパー》は、人数に合わせて抽出可能な可変式のコーヒードリッパーです。モビールと同構造の彫刻のようなフォルムにより、まるでコーヒーがブラックホールへ落ちていくかのようにドリップされます。
※《SPACETIME-時空》は、高精密なエッチング加工を得意とする(株)S.G.Kの技術力により実現しました。