棕櫚という植物の本質的な機能と造形的特性に着目し、幹という中核を包み保護する樹皮の在り方を再解釈することで、新たな樹皮の造形を提示すると同時に、素材の持つ潜在的な力を可視化した照明器具。
樹皮が担う役割を視覚的かつ構造的に提示するため、
棕櫚皮に柿渋加工を施し、中空円錐形状に成形している。上部に照明機能を内蔵した金属製キャップを設置することで、ポータブル式のテーブルランプとなる。
この中空円錐形状の樹皮シェードは、極めて繊細な印象を与える意匠である。しかし、その脆弱性は棕櫚皮という素材が持つ多様な物性の一断片の姿に過ぎず、金属キャップを頂部で支える様は、素材に内在する繊維の強度と構造的持続性を象徴的に示している。
点灯時には、金属キャップに内蔵された光源からの光が、樹皮シェードの中心へと垂直に落ち、光という現象が本作においての中核を成す。内側から照らされた樹皮は、光を抱くようにして質感と表情を変化させ、棕櫚という素材に潜む、断片的な姿や気配を明らかにした。
樹皮が光を包み込むシェードの構造は、人が対象を抱く所作を想起させ、その造形的意味を込め『HOUYOU(抱擁)』と名付けた。